Assisi Summit in Italy


ミラノからユーロスター・イタリアで2時間ほど車窓からの景色を眺めている間に次の停車駅はフィレンツェ、そこからローカル線に乗り換えて更に2時間ほど南東に向かうと歴史の香りが漂う街アッシジに到着する。この街の出身である聖フランチェスコと彼の名を冠したサン・フランチェスコ聖堂で広く知られるアッシジは市街全体が丘陵地帯で、城壁に囲まれた情緒溢れる佇まいが実に印象的である。そんなアッシジ近郊でサステイナブル・コミュニティづくりを目指してスタートアップしたプロジェクトがあり、僕が立ち上げ準備を進めている構想とシンクロする部分が大きいと聞いて訪ねることになった。

プロジェクトをスタートアップしたのはイタリア・ボローニャ出身のエンリコ(Enrico Zappoli )。「Officine al Sole」と命名されたプロジェクトは、アッシジに隣接するベットーナの広大な土地を活用して宿泊・食事・体験学習を提供する多目的エリアを生み出し、人と自然の調和した生活様式を試行するプラットフォームを創ろうというものである。まさに僕が日本で試行してきた活動&これからスタートアップしようとしている活動と様々な点で深くオーバーラップしていて、地球の反対側で同じビジョンをもって同じタイミングでプロジェクトが展開されようとしていることに只ならぬ興奮を覚えた。

プロジェクトのフィールドとなる広大な土地には様々な木々や植物が自生していて、かつて修道院や家畜小屋として使われていた味わい深い建築物も残っている。エンリコは「これらを活用して再生する計画に着手し始めたところなんだ!」と話しながらフィールドを懇切丁寧に案内してくれた。小屋のリノベーションプランの図面も既にできあがっていて、今後2年ほどかけて順次施工していくとのこと。各地から訪れてきた人たちが地産の食材によるオーガニック料理を堪能し、リノベーションされた歴史ある建物に泊まり、農的体験から新たな気づきを得る。さらには、地域の人々もそこに関わっていく。想像するだけでワクワクする。


ところで、今回、イタリア・アッシジ近郊のベットーナでスタートアップしたエンリコのプロジェクト「Officine al Sole」の現場を訪ねることになったのは、僕の親友のチャッド(Chad Morse)が初夏に提案してくれたことがきっかけだった。"Hey Shugo, I just had a crazy idea. I'm going to meet up with my friend Enrico Zappoli around October 23 - 27 in Assisi in italy. He is starting a project called officine al sole that has similar goals/values to your project in Japan. What would you think of joining us in italy to chat and brainstorm?"  "Hey Chad, I really like your crazy idea!" 物事はいつもこのテンポで始まる。

チャッドには僕が構想実現を推進するプロジェクトのコアメンバーをお願いしていて、いつも「次はどこでMTGしよっか?」とお互いに盛り上がっているわけだが、「イタリアでMTGしちゃう?」というノリになったのが今回の訪問である。今はイギリスでサステイナビリティを研究しているチャッドは教育・農業・環境分野に専門性をもっていて、いつもウィットに富んだ的確なアドバイスをしてくれる。そして、今回は農的活動のエキスパートたちも世界各地から集まることになり、チャッドとのプロジェクトMTGに加え、僕の構想するプロジェクトについてエキスパートたちと大いにディスカッションする機会にしようということになったのである。


赤ワインとともにブレストの勢いは加速し、滞在する毎日が構想のアップグレード。さらに、各地で取り組んでいるお互いの事例を共有して盛り上がり、最後はエンリコのフィールドで農的体験トライアル版としてオリーブ収穫をしようということになった。これが、僕にとって人生初のオリーブ収穫体験!今年は豊作らしく、一本のオリーブの木からの収穫量は山盛り。普段、レストランでオリーブが出てくると何気なく食べているが、こうやって実際に収穫すると、「オリーブってこうやって実がなって、こうやって収穫するんだ!」と今更ながらに思う。日常生活の中で自然と関わる体験学習機会があるだけで随分と人の意識も変わるとの確信が高まった。


そういえば、チャッドもエンリコも僕も見事に同い年。各国から集まった農的エキスパートたちも殆ど同世代。実は、今、世界のあちらこちらで、極めて近いビジョンをもって地域からボトムアップでアクションを起こしていこうという同世代の動きが連鎖しているのである。日本国内でも様々な取組があるが、世界各地にも同種の取組が多々存在している。それらをネットワークで結んでお互いインスパイアされる関係を築くのは最高にエキサイティングである。みんなで最後にした会話は、それを強く予感させる。 "So, next time... we're gonna meet in UK? US? Japan? Italy again?"  "Hmm, anywhere on earth!"  "Sounds great!"  "Fantastico! Ciao!"