アショカ・フェロー Nikom Puttaさんとの対談@チェンダオ


チェンマイ中心部からバンで2時間ほど北上すると“星の町”を意味するチェンダオに到着。町の北部はミャンマーとの国境を形成するボーダーエリアである。UNDPコンサルタントの案内とともに、我々はチェンダオのバードセンターのロッジに辿り着いた。出迎えてくれたのは、チェンダオのコミュニティリーダーでアショカ・フェローのNikom Putta(ニコン・プッタ)さん。元・フォレストレンジャー(森林警備隊員)のニコンさんはタイをリードする環境活動家の一人で、チェンダオの村々を巻き込みつつコミュニティベースの森林保護活動を推進する人物として広く知られている。風貌や立居振舞は沖縄離島の民宿にいるオジさんそっくりで、オープンテラスでのセッションが妙に心地よい。ニコンさんをキヤノンのカメラで撮りつつ、我々はティータイムのディスカッションを進めた。

タイでは政府主導で森林政策が展開されてきた経緯があり、森林伐採禁止やダム建設で山村地域の住民を強制移住させるなど、地域コミュニティの実情を軽視したトップダウン型の政策が山村環境を悪化。結果として、森林喪失が進行して地域資源の枯渇が表面化した。この状況を受けて、ニコンさんは、チェンダオの村々の住民と対話しながら連携体制を作り、村々の地域資源をお互いに有効活用する基盤を形成していったのである。思うに、原理としては極めてシンプルで、“自然との共生”や“村々との相互扶助”の精神に基づく地域コミュニティの形成が活動の基軸にある。したがって、活動の体現の仕方は多様となる。近年、ニコンさんが関心をもっている手段は、平和を想うウォークイベントの開催らしい。彼の発言は、極めてスピリチュアルな性質を帯びていた。


ニコンさんとのディスカッションを経て、チェンダオの自然を味わいながら改めて地域コミュニティづくりについて思索を巡らした。自身の中に浮かんできたキーワードは「デザイン(設計)」である。ニコンさんの場合、森林環境を入り口として、タイの山村地域のあり方をデザインしたと言える。その設計図を具現化したのが今のチェンダオの姿。この活動スタイルには非常に親近感を覚える。日本でもニコンさん的な活動を進めている方々に遭遇する機会がよくあり、このような人々を連携して活動を加速できないかというのが自身の関心事の一つ。アショカ財団は社会起業家の概念を提唱して社会を啓発した功績は高い一方、既に社会に認知されている活動家をフェローとして“追認”している様相が強い。地域コミュニティーに埋もれている有能な人材を発掘して支援することこそ、真に必要なことなのではないだろうか… と天然温泉の足湯をしながら考えていた。