寄稿:茨城県つくば市のICT教育事例書


自身の教育分野における専門性を活かす形で本年より慶應義塾大学SFC研究所の上席訪問所員として参画させて頂いている「地域情報化研究コンソーシアム(代表:國領先生)」の教育分科会では、地方自治体の教育分野におけるICTの利活用について調査研究を進めている。全国の様々な地方自治体に足を運び、首長・教育長・情報システム担当者との議論を深める中で、次第に地方自治体の学校教育におけるICT利活用の実態が浮き彫りとなりつつある。その中でも、教育分野におけるICTの利活用において日本をリードする自治体の一つが“つくば市”。そのつくば市が、ICT教育の最新事例をまとめた本を出版されるということで、調査研究を進める立場から見たつくば市について同書に寄稿させて頂いた。これが、この度、書籍『21世紀のICT教育とその成功の秘訣』として出版されるに至ったことをご案内させて頂きたい。

これまでの研究活動に基づくと、自治体は主として3つのパターンに分類される。すなわち、①ICTインフラ整備の議論に終始している自治体、②ICTリテラシー教育の展開に注力している自治体、③学校教育において積極的にICTを利活用している自治体である。実際には、①ICTインフラ整備や②ICTリテラシー教育の議論にとどまる自治体が殆どであり、③ICT利活用に話が及んでいる自治体は片手で数える程しかない。このような現状の中で、つくば市は“学校教育にICTを存分に利活用している”数少ない自治体の一つ。様々な授業で取り入れられている電子黒板を使ったプレゼンテーション、TV会議システムを利用した環境教育やキャリア教育、スタディーノートポケットやデジカメを実践的に使った授業。そのような実践的ノウハウが集積された本書は、ICT利活用に注目する教育関係者には示唆深い内容となっている。