一(いち)

昨年、TEDを通じて知り合った魅力的な方々とのご縁が脈々と続いており、今日はTEDxSeedsディレクターの伊藤弘雅さんの招待で、とある集まりに足を運ばせて頂いた。多分野で活躍する方々8名が参集し、御茶室で「この国のかたち」をテーマとして緩やかに意見交換をするという粋な企画である。伊藤さんの御婆様の茶室で濃茶を頂くことから始まる御もてなしには感服した。濃茶と言えば、松下政経塾時代に茶道研修の総仕上げとして京都・今日庵で御点前を頂いたとき以来である。7年ぶりに“にじって”茶室に入るのが非常に新鮮だった。

濃茶を頂いた後、障子越しに差し込む柔らかい光に包まれる茶室でそこはかとなく話が始まるのだが、座布団に腰を下ろして8人の自然な対話が展開されていく空間には言い知れぬ心地よさが漂う。このような場だからこそ生まれる良質な気づきというものが確かにある。それぞれの実体験から築き上げられた哲学に基づいて対話が続き、理想とする国のかたちの輪郭が見え隠れする。内容もさることながら、同世代がこのような場でこのようなテーマについて話すということそのものが非常にいい。視線を上げると、掛け軸の文字は「一」。新たな一歩の始まりかもしれない。