トランジション夏フェス@藤野


2005年にイギリスで始まったトランジション運動は、今もなお世界各国に広がり続けている。トランジション運動とは、「ピークオイルと気候変動という危機を受け、市民の創意工夫と地域資源を最大限に活用しながら、脱石油社会へ移行していくための草の根運動」。石油依存社会→脱石油依存社会が、トランジション(移行)の名の由来である。この動きは日本にも着実に広がりを見せ、トランジション・ジャパンを中心に活動が展開されている。8/27-28は日本各地でトランジション運動を推進するメンバーが集うトランジション夏フェスが開催され、今年の会場となった神奈川県の藤野に足を運んだ。

ちょうど1年前、実際にトランジションの現場を見てみたいと思ってイギリスのトットネスというトランジション運動発祥の地に足を運んで学んで以来(詳細)、日本ではどのような取組が行われているかについて自身は興味をもっていた。今回の夏フェスでは日本各地のトランジションタウンの取組が紹介され、実に多様な活動内容を窺い知ることができた。それもそのはず、トランジション運動は一定のガイドラインはあるものの、画一的なフォーマットで縛られているわけではない。まさに地域住民が創意工夫で取り組むコミュニティー活動。紹介された活動分野は、農業、エネルギー、地域通貨、住居…と多岐にわたっていた。


例えば、トランジションタウン藤野では、様々なワーキンググループがパラレルに活動を進めている。地域通貨の導入によって、藤野の財源をコミュニティー内にとどめるとともに人々の関係性を構築する。地域内で電力会社を設立して経営するというアイデアが生まれ、具体化に向けて検討が進む。さらに、地域に存在する豊かな森を活用しようと研究が始まる…。このようにして、興味関心をもつテーマに地域の人々が参加し、少しずつコミュニティー活動の基盤が形成されているのである。人口減少時代にありながら、人口1万人ほどの藤野には芸術家や職人の移住が相次ぎ、トランジション活動の広がりにポテンシャルが見られる。

このように聞くと、いわゆる地域づくりに近いのではないかとの印象がある。おそらく、そうだと思う。ならば、日本人にとっては、トランジションという言葉よりも、地域づくりや地域再生といった言葉のほうが理解しやすいのではないかとの見方もある。しかしながら、トランジション運動は、地球規模の環境変化に基づく社会モデルの移行を強く意識しているという点において、活動の方向性がより明確である。さらに、世界のトランジションタウンをネットワークで結ぶ連携が大きな可能性を秘めている。日本の地域の取組の多くが内向きになりがちであることを考えると、世界規模のトランジション運動に学ぶ余地もありそうである。