TEDxYouth


TEDxYouthDayの11月20日、TEDxYouth@Seedsのキュレーター(カンファレンス進行役)を務めさせて頂いた。このTEDxYouth@Seeds(テド・エックス・ユース・アット・シーズ)は日本の20代にフォーカスしたカンファレンスで、アイデアのプレゼンテーションを通じてお互いをインスパイアする場を創出する試みである。7名の登壇者、120名超の参加者、TEDxYouthスタッフが一緒に創り上げる、実にエキサイティングな場となった。

TEDはアメリカで始まったカンファレンスで、“Technology, Entertainment, Designの3つの領域が一体となって未来を形作る”という考えに由来した命名である。カリフォルニア州モントレーで年1回開催されていて、プレゼンテーションやパフォーマンスを通じて多分野からのアイデアが次々と紹介される。その歴史は古く1980年代に遡るが、世界的に周知されるようになったのはカンファレンス動画のネット配信が始められた2006年以降。そして、このうねりを世界に推し進めているのがTEDx(テド・エックス)。端的には、「自分の国・地域でもTEDを開催したい」と共鳴したキーマンが、TEDの"Ideas Worth Spreading"の価値観に基づいて世界中でカンファレンスを立ち上げているのである。各ライセンス団体は、過去にTEDで行われたプレゼンテーションの動画"TED Talks"を織り交ぜながら、独自のコンテンツを構成している。

このTEDxは日本にも上陸し、幾つかのライセンス団体が既に活動を展開している。その一つがTEDxSeeds(テド・エックス・シーズ)。「日本のアイデアを世界の人にもっと知ってもらいたい」という想いから出発したTEDxである。そして、この2010年、世界中のTEDxライセンス団体が11月20日に同日開催で一斉にTEDxYouthDayのイベントを行おうという運びになり、TEDxSeedsではTEDxYouth@Seedsとして開催することになった。僕はアメリカの友人の紹介で4年くらい前からネットでTED Talksを見て興味をもっていたのだが、初夏にTEDxSeedsディレクターの伊藤弘雅さんに出会い、Youthカンファレンスを立ち上げたいという話を聞いて、自分が役立てることがあれば是非貢献したいと意気投合したのである。こうして11月20日、「宣言」をテーマとするTEDxYouth@Seedsでキュレーターを務めさせて頂くことになった。


登壇者は20代の7名。実に魅力的な面々で、バングラディッシュでドラゴン桜を具現化した税所篤快さん、カンボジアで人の豊かな表情を写真に切り取る安田菜津紀さん、学ぶ力を身につける教育を展開する起業家の清水章弘さん、世界20カ国を自転車で走るサイクリストの山崎美緒さん、女性をテーマに独自の書を描き出す書道家の永田紗戀さん、宇宙物理学者にしてプログラマーの村主崇行さん、ドラディカルな現代アーティストのスプツニ子!さん。参加者は厳選の120名超。「宣言」というテーマの通り、何かを為したいとの熱い想いをもった20代の参加者が推薦と公募で選抜されて集まった。そして、このカンファレンスを創り上げたのが社会人と学生の混成プロジェクトチーム。上堀宇花さんと岡本俊太郎くんのツイン・ディレクター体制のもと、有志のスタッフのみんなが一丸となってこの場を生み出した。

そのようなエキサイティングな場の進行を務める役職をTEDでは“キュレーター”と呼ぶ。通常、キュレーターとは博物館や美術館などで専門的知識をもって展示などをオーガナイズする役職を指すが、なるほど、TEDにはぴったりの言葉である。次々と展開されるプレゼンテーションやTED Talksにストーリーを紡ぎながら進行していく。登壇者のプレゼンテーションやTED Talksが非常に興味深く、ストーリーを紡ぎ出すキュレーションも右脳と左脳のツインドライブをフル回転させる瞬間芸術。まさに、あっという間でありながら、非常に濃密な3時間を過ごした。これまではネット上の動画を通じて見ていたTEDだったが、実際にこのライブの場を体験して、会場に集まった全員が一緒に創っていくインスピレーショナルな瞬間の連続と言われる所以を実感した。キュレーターという貴重な役回りを担当させて頂いたことに感謝しきりである。

人の潜在性が引き出されるきっかけ。その一つとして、やはり人との出会いを通じたインスピレーションは欠かせないものだと思う。その意味で、人を魅了する優れたアイデアが様々な分野から飛び出すTEDという“場”は、一人一人の中に眠っているワクワク感を呼び起こす手法としても非常に興味深いと改めて感じた次第である。ワクワク感を起点に人の潜在性が引き出されるような社会を創りたい僕としては、ある意味、「毎日がTED」な社会を創ろうとしていると言えるのかもしれない。


【参考】 TEDxYouthで上映したTED Talksのリンクは以下の通り。いずれも珠玉の名作!
・ホアキム・デ・ポサダ「マシュマロはまだ食べちゃダメ!
・アドーラ・スヴィタク「大人は子供から何を学べるか
・デレク・シヴァース「目標は人に言わずにおこう
・マッド・リドリー「アイディアがセックスするとき
・プラナフ・ミストリー 「次なる可能性を秘めたSixthSenseテクノロジー