Southeast Asia Program 2011


今春も非営利教育機関Learning Across Borders主催のSoutheast Asia Programが開催され、昨日、盛況の裡にコンプリートを迎えた。17日間にわたってタイ・マレーシア・シンガポールの3ヶ国を縦断するスタディープログラムで、これまで過去20年の歴史を刻む。日本を中心にアジア各国の大学生を対象に毎回20名程度の定員を設定しているが、今回はエントリー数が非常に多かったことから、最終的には過去最多の26名参加となった。ディレクターのドワイト・クラークさんが引率するハンドメイドのプログラムは、意識の高い学生を惹きつけてやまない。それゆえ必ずと言ってよいほどエキサイティングな場となるため、主としてプログラムの事前事後サポートを任とするアソシエイト・ディレクターの僕も、可能な限り現場に入らせて頂くようにしている。今回も何とかスケジュールを工面して、プログラムの最初1週間となるタイのパートにサポート参画させて頂いた。

プログラムは“現地で一体何が起こっているのか”を体感的に学ぶことを重視しており、政治・経済・文化など多面的な切り口で日々のアクティビティが構成されている。国際機関やNGOへの訪問、現地の大学生との交流、社会問題現場の視察、歴史的文化遺産の探訪など枚挙に暇がない。同時に、自分たちが感じたことに基づいて、グループ内でディスカッションするリフレクション・セッションを各国で行う。このセッションは8年前にドワイトさんと一緒に始めて以来、今ではすっかり定着した。そして、今回、新たにトライしようということになったのがディスカバリー・セッション。東南アジア諸国の現場を巡ることは、自国の良さを再発見する良い機会だと考えたことによる。そこで、トライアルとして、“日本はグローバル社会で何ができるか?”をざっくりとしたテーマに据え、日本のもつ強みと弱みをブレストした上、それをどう活かせるか/克服するかについてディスカッションすることになった。


初の試みゆえ、一体どのような帰結になるか見当が付かなかったが、その懸念はメンバーのみんなが軽く吹き飛ばしてくれた。東南アジアに来て改めて自分の国を見つめたとき、日本がグローバル社会に貢献できるような強み(Strength)とは何だろう?議論のきっかけとしてドワイトさんから「ソフトパワー」のイントロダクションをしてもらうと、メンバーから次々と声が上がった。日本食、アニメ/マンガ、ガールズ・ファッション、勤勉さ/礼儀正しさ、トイレのウォシュレット技術…。それらを類型化すると、人種的性質、思想、芸術、スポーツ、テクノロジー、地形などに整理される。即席で用意したホワイトボードは、溢れるメモで埋め尽くされていった。同様に、弱み(Weakness)についても次々と指摘が続く。結果として、日本の強みと弱みがメンバーの中で言語化されるに至った。今度はこれをどう活かすか/克服するのかを議論するというフェーズになるのだが、これはプログラム中の2ndセッションに引き継がれた。

今回、このディスカバリー・セッションをトライアルで試行した意図は、一義的には、東南アジア各国の現場理解とセットで日本の今と未来を考えるということにある。しかしながら、真の意図は、プログラムに参加してくれるような意識の高いみんなが「世界の中の日本の置かれた状況を踏まえた上で、今後日本はどうなっていくべきで、それを推し進めるためには自分は何をすべきか/何ができるか/何をしたいのかを考える」ということにあった。僕がビジネスの現場最前線で日頃接している経営者や採用担当者が口を揃えて指摘するのは、「近年の学生は例年になく安定思考になってしまっている」。総合的に定性ファクトを繋ぎ合せると、「20代は“ごく一部の意識の高い人たち”と“大部分の安定思考の人たち”に相当明確に分かれている」。そんな状況ではあるものの、今回プログラムで出会ったみんなは、世にアクションを起こしていくポテンシャルをもった非常に魅力的なメンバーだと僕は強く感じている。


【案内】 Learning Across Bordersのスタディープログラムに興味関心をもたれた方は、ウェブサイトより具体的なプログラム内容をご覧頂けます。ネクストプログラムは8月に予定されているミャンマープログラムとなります。
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