JFN: 中村敦夫さんとの対談


全国30のFM局で放送するJFNON THE WAY ジャーナル WEEKEND』のパーソナリティを務めさせて頂いた。今回のゲストは、俳優、作家、脚本家、キャスター、政治家と多分野で活躍されてきた中村敦夫さん。70年代にテレビ時代劇『木枯し紋次郎』で大活躍された姿を思い浮かべる方も多いだろうが、僕らの世代としては、『中村敦夫の地球発22時』『中村敦夫のザ・サンデー』などの番組キャスターや、さきがけ/みどりの会議の代表の立場で政治家として活躍する中村さんのイメージが強い。2007~2009年にわたっては同志社大学大学院で講義された中村さんは、この度、その講義録をベースに加筆・修正を加えた書籍『簡素なる国』を講談社から出版された。折しも、東日本大震災を経験した日本にとって非常に示唆深いメッセージが込められた内容で、僕自身も先週滞在していた中国・北京にこの本を持ち込み、宿泊先で大変興味深く読んでいた次第である。

今回の対談では、大震災で露呈した様々な課題を概観した上で、中村さんが提唱される“簡素なる国”について深くお話を伺った。僕が一番感銘を受けたのは、中村さんの描くビジョンは、ご自身が世界を舞台とした現地現場の実体験に基づいて、それこそ何十年もかけて試行錯誤しながら作り上げてこられたものだということである。それは、お話の中で紡がれる一つ一つの言葉の重みが雄弁に物語っている。その内容は、書籍および番組を通じて直接感じて頂ければ幸いである。また、僕にとって毎回必ずと言ってよいほどゲストと何か共通点が出る当番組で、今回の共通点は中村さんのビジョンを理論的に支える経済思想家のE.F.シューマッハー。『スモール・イズ・ビューティフル』の著者で知られる彼の思想哲学を取り入れたシューマッハー・カレッジこそ、昨年夏に僕がイギリスで学んでいた場だったのである。だからこそ、中村さんの“簡素なる国”がより強く伝わってきたのかもしれない。併せて、参照されたい

中村さんとの対談の結びにて、この国のかたちは誰かに与えられるものではなく、全員が一緒に考えていくべきものだという話になった。中村さんが提唱される“簡素なる国”は、今、我々が改めて認識しておくべきビジョンの一つであると思う。一方、思うに、この国のかたちに正解はない。無数のグラデーションをもつ価値観の中で我々は何を選んでいくのか、時間はかかるが一つずつの議論を経て理解していく必要がある。また、世界はどんな歴史を経て今に至り、その学びから我々はどの方向に進むべきかも議論で共有する必要がある。そのプロセスを放棄しては、きっと同じ過ちを繰り返すだろうと思う。昨晩、NHKでマイケル・サンデル教授の大震災特別講義で展開される様々な議論を見ていて殊更そう思った。ただ、何もマジメに硬く考えすぎることもない。なぜなら、様々な人々から様々な価値観を学び、全体としてどんな社会にしていきたいかを考えるプロセスは、ワクワクするエキサイトメントに満ちているのである。