中尊寺のメリークリスマス


朝、目覚めて窓を開けると、一面が銀世界とはこのことか。岩手県一関市の山奥に一晩で数十センチ積もった雪の上で歩くリズムに合わせて、新雪を踏み込む柔らかい音がする。そう言えば、冬の東北を訪ねるのは初めてだった。寒いのは極度に苦手だが、ヒートテックを重ね着してダウンジャケットを着ていれば、冬景色を楽しむのも意外にいける。そうだ。平泉へ行こう。今年は何度も一関まで足を運んでいながら、まだ一度も平泉の世界遺産を拝んでいない。雪に埋もれたレンタカーを動かして、カーナビの目的地を平泉の中尊寺に設定した。

想定していたよりも観光客は少なく、適度な静けさが絶妙に心地よい。中尊寺の表参道たる月見坂を上りながら、樹齢300年超の杉の並木道に積もる雪を愛でる。中尊寺というと金色堂のイメージが先行していたが、参道沿いの様々な御堂が実に味わい深い。中尊寺本堂をはじめ、不動堂・阿弥陀堂・弁財天堂など、見事な佇まいを湛える御堂が立ち並ぶ。寺は、何故かくも人の心を落ち着かせるのだろうか。春は夜桜、夏には星、秋に満月、冬には雪。それで十分、茶はうまい。中尊寺のメリークリスマス。