ミャンマーのスラム潜入
ヤンゴン中心部から車で40分ほど離れたところにある Pan-Hlaing エリアを訪ねると、富裕層と貧民層がフェンスを境に隣り合わせになっている特殊なエリアが出現した。このエリア一帯には、もともと経済的に厳しい境遇に置かれた人々が仮住まいを建てて生活していたのだが、土地が比較的安価だったために丸ごと買い上げられてリゾートのようなレジデンスが誕生。南国リゾートを彷彿とさせる富裕層エリアには、大使館関係者をはじめとして社会的に高い地位をもつ人々が生活している。一方、もともと居住していた貧民層は追い出され、買い上げられた土地のすぐ脇に移動。結果として、フェンス1枚を境に、こちらは富裕層、あちらは貧民層という状況が生まれたようだ。
レジデンスの駐車場に車を停めて、ミャンマーの友人たちとともにフェンスをまたぐと、忽然と貧民層のスラムが現れた。なんとも不自然なコントラスト。しかしながら、スラムに生活する人々の顔つきには人間が本来もつ生命力が宿っていた。富裕層のレジデンスを颯爽と歩く人々の顔つきと比べると、スラムの人々には“人間的な”何かを強く感じる。ただ、当然ながら、スラム内の衛生状態は芳しくない。ゴミ、汚水、家畜臭… 雨期のミャンマーにあっては、衛生上、様々な問題の表出が容易に想像できる。そして、スコールのような雨が降り出した。すぐに大きな水たまりができあがると、子どもたちが水たまりに飛び込んで遊び出す。
このようなスラムは、ヤンゴンだけでも既に多数存在しているという。急激な変化が進むミャンマーの都市のあちらこちらには、職を求めて都市部に出てきたものの住居がない人たちが寄り添って生活するスラムが影を潜めている。今後、ミャンマーに進出する外資系企業が増加するに伴って都市部に移住する人々の数も膨れ上がり、スラムに生活するという選択をとらざるを得ない人々も増えることが予想される。どのような視座に立つかによって、この状況の捉え方は変わるだろう。ただ、一つ言えることは、スラムに住む人々もまた、変わりゆく社会の一部を担う構成員であるということかもしれない。