ブルージュで考える観光まちづくり


ブリュッセルから北西に向かって電車に揺られること約1時間、そこはフランドルの水の都ブルージュ。水路に架かる数々の橋から臨む歴史的な建造物が中世ヨーロッパの姿を想起させる美しき街。北海と水路で結ばれていたブリュージュは、12-13世紀に貿易港として大いに繁栄したが、15世紀には水路の沈泥化で商業の水路が閉ざされて都市機能を失った。結果として、中世の景観をそのまま留めることになり、今では街そのものが歴史的な世界遺産。都市の変遷にも数奇な運命の物語がある。

ブリュージュの街歩きは、タイムスリップした感覚を抱かされるのが興味深い。一方、都市の経営分析という観点から見ると、中世ヨーロッパの面影を残す都市のハードウェアが魅力的な商品となり、これに惹かれて訪ねてくる観光客が落とすお金で地域経済が潤っている。ただ、飲食業・宿泊業・ツーリズム業を主要産業とする観光都市モデルの維持も容易ではない。街ぐるみでハードウェアの魅力を保ち続けなければならない。観光まちづくりには、都市という商品づくりの醍醐味と商品維持の努力の両面を深く考えさせられる。