キンデルダイクに広がる19機の美しき風車
ベルギーから列車でオランダへ。ブリュッセル南駅で特急列車THALYSに乗り込むと、僅か2時間でアムステルダムに到着する。アムスのコーヒーショップや飾り窓ストリートに惹かれつつも、オランダでの研究対象は風車。自身の風の谷構想には必須のアイテム。アムステルダム中央駅向かいのヴィクトリアホテルに荷物を預け、目指すはキンデルダイク。世界遺産に指定された19機の風車が残る小さな村。ロッテルダムを経由して幾つかの町を通過しながらバスで向かう。前の席に座る陽気なオランダ人のお婆さんと世間話をしている間に、バスの車窓から巨大な風車網が忽然と姿を現した。キンデルダイク!
オランダ国内で最大規模と言われるキンデルダイクの風車網は、干拓地の排水を行うために1740年代に建設された歴史をもつ。国土の1/4程度が海面よりも低いオランダにおいて、排水システムは極めて重要なインフラ。とりわけ、13世紀から排水の問題が発生していた当地では、排水に関する苦難の経験から風車が生み出された背景に疑いはない。ただ、その苦難の歴史を想像しつつも、キンデルダイクの地に広がる19機の風車の姿はあまりにも美しい。その美しさは外観だけではない。風車の内側に入ると、木造の歯車が精巧に組み合わさって自然の風力を動力に変換する美しい構造に感服する。自身の風車研究は、文字通り追い風を受けた。